悩みを聞き不安を和らげてもらう-。対話を通じて心のケアを行う精神対話士が、東日本大震災の避難所で本格的な活動を行っている。1カ月以上が経過し、被災者の悩みは多岐にわたる。相
手が悩みを打ち明けられる雰囲気をつくり、じっくりと話を聞いて、前向きに生きる手伝いをするのがその役目だ。
精神対話士は、1993年に設立されたメンタルケア協会(東京)が認定する資格。孤独なお年寄りや引きこもりの青年らの話し相手を務めたり、阪神大震災など多くの被災地に派遣された実績を
持つ。
福島県郡山市の避難所に派遣された精神対話士の来馬弘子さん(55)は、同県冨岡町の三瓶優華さん(27)の話を聞いた。同町は福島第1原発事故の避難地域に指定され、6月に結婚式を挙げる予定だった式場も津波で流された。三瓶さんは「結婚式を挙げたかったな」とつぶやく。
来馬さんは「いつ、どんな形でも式は挙げられる」「(式を挙げ)良い思い出を残そう」と語り掛け、落ち込む三瓶さんを元気づけた。さらに話を聞いているうちに、三瓶さんは「いつか絶対にウエディングドレスを着ます」と言い切るようになったという。
同町の主婦(40)からは息子の悩みを打ち明けられた。「小学校に入ったばかりの息子は学校に
行きたがらない。幼稚園の卒園証書を受け取っていないので、区切りが付かないのだと思う」と話した。来馬さんは「スタートを切らせてあげないとね」と優しく語り掛け、卒園証書を手作りするよう提
案した。女性は「一歩踏み出すきっかけになった。実践してみます」と声を震わせた。
メンタルケア協会災害心のケア対策本部の勝沼靖本部長によると、被災者は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の恐れが指摘されており、「病気の予防のためにも、不安を打ち明ける機会づくりが大事だ」と対話の重要性を説いている。
今回の震災で、精神対話士は4月上旬以降、福島、宮城、岩手の避難所に順次派遣され、被災者の悩みを聞いている。
対話を通じて心のケアを行う精神対話士が、東日本大震災の避難所で本格的な活動を行っている。写真は、避難所で被災者と話す精神対話士の来馬弘子さん(左)=4月15日、福島県郡山市のビッグパレットふくしま